力が欲しいか、欲しければくれてやる! 「はっ!? 今、誰かあたしに悪魔的な囁きをしませんでしたかっ!?」
「授業が終わったから声をかけただけなんです……別に私は悪魔とかそういうのではないんです……」
「あ、ゆずちーじゃないですか!」
「私も真後ろにいるぞ」
「なんですと!?」
背後にあたしを暗殺しようとしているくーちゃんが!!
まさかそこまで油断しているとは迂闊なりあたし!!
「みっちゃん程度の雑魚なら正面からでも余裕で倒せる。どうせ経験値1ポイントしかくれないんだろ」
「あたしはメタルな防御力なので、力がいっぱいないと倒せません」
「試しに殴ってもいいか?」
「そ、それは……ダメです!! あと、あたしは世界に1体しかいないレアなので、10万ポイントくらい入るはずです!」
「むしろどこのどいつが2体いるのか言ってみろ!」
「双子の人!」
「予想以上に反論し難い答えだ!? ゆずちーヘルプ!」
「……経験値、入りません」
「くっ……!」
あたしを殺せば殺人の熟練度が少しくらいはアップするのではないでしょうか!? 繰り返せば段々と慣れると思うんです! それこそ熟練度が増加している証拠!! そして将来は立派なアサシンに!!
「みっちゃんは殺されたいらしい」
「そんなことあたしは言ってませんからね!」
「みっちゃんはメタルらしいからきっと魔法攻撃は効かないはずだ! さあ、ゆずちー! みっちゃんを魔法で滅多打ちに!!」
「ええーっ!? そんなことできるわけがありません! それと私は魔法なんて使えませんから!!」
「そうそう! ゆずちーは魔法なんて使えないからあたしを魔法爆撃なんてできません!」
「前と言ってることが変わってるぞみっちゃん!」
「仮にゆずちーが魔法を使えたとしても、ゆずちーは防御力のない後衛! ばりばり前衛戦士のあたしにかかればすぐにノックダウンですからね!」
「ゆずちー、みっちゃんをダウンさせて現実を分からせてやってくれ」
「いえ、その……」
「無駄な争いはやめるべきだとあたしは思います!」
「みっちゃんは大人になってもそんなだと余計な面倒ごとをいっぱい背負うことになるかもしれませんから、今後はあまり余計なこと、迂闊なことは言わない方がいいと思います」
「やはり力ですね! 力さえあれば必然的にあたしの言葉にも強制力が伴ってくると思うんです!」
「確かに権力があればそうでしょうけど……みっちゃんにそういう立場は難しいのではないでしょうか」
「暴力で支配するという方法も!」
「まさかの恐怖政治だった……。だがいいのか? ゆずちーが革命を起こすぞ。みっちゃんはそのままギロチンだぞ」
「ギロチンなんて危ない物を考えた変態はどこの誰ですか!」
「知らんよ!」
あの重たい刃が首に落ちてきてすぽーんと飛ばすやつ!! ああいうのが許されるのは調理中の魚だけだと思います!!
「筋力のある男子が羨ましいです!」
「何!? みっちゃんがマッチョになりたいと!? さすがに視覚的にどうかと思うぞ……」
「そんなにはいりません! マッチョが1リットルだとしたら200ミリリットルくらいでお願いします」
「どうして急に筋力なんて……?」
「重いものを持ち運ぶのに便利です!」
「ギロチンか」
「それはもういいです!!」
そうメタルな防御力を持っているのであれば、次はちから255ポイントを目指すべき!
「小学生だった頃夏休み前とかに荷物を持ち帰ったのを覚えてますか?」
「はい。通知表とか……」
「ランドセル、ピアニカ、習字道具、絵具セット、裁縫セット、上履き、体育館履き、道具箱。これを休みの前日に全部持って帰るのには凄く苦労したんです! 重くて家に辿りつくのに凄く時間がかかったのを覚えてます!! あの時、あたしにパワーがあれば……」
「えっと……それは、事前に持ち帰っておかなかったみっちゃんが悪いのであって……」
「やったことのないゆずちーには分からないんです!!」
「ご、ごめんなさい……!」
がおーと吼えたらゆずちーがすぐさま謝ってきました。
「ゆずちーを虐めるのはそこまでにしてもらおう! そもそも小学生じゃどちらにせよそんなにパワーはないだろ!」
「瞬間移動できるくーちゃんに言われると腹が立ってきました!」
どれだけ重たい荷物であろうとあら不思議。指1本触れているだけで自宅まで1秒テレポート! 羨ましすぎて血の涙がでます!! あたしも瞬間移動したり、魔法使ったりしたいです!!
「言っておくが使えるようになったのは最近だからなっ! 予想以上にちっちゃい脳ミソに刻み込んで起きたまえ!」
「それはともかく……」
「都合の悪い事実から目を背けたぞゆずちー」
「それはともかく、中学生女子ともなれば多少の力は必要だと思うんですね!」
「そ、そうでしょうか……? 個人的にはそんなにはいらないと思いますけど……」
「鉄アレイとか、腕立て伏せとか? あとはなんだ? バーベルでも持ち上げるのか?」
「単純に重いものならペットボトルとかでも代用はできますね」
水とか砂とかお菓子とか詰めるんですね、分かります。でも、
「筋力つけるには懸垂が良いってお姉ちゃんが言ってました」
「なるほど……懸垂ってことはつまりは自分の体重と同じものを持ち上げてることになるわけか!」
「つまりゆずちーが一番おも……なんでもありません」
べ、別にゆずちーのうるうるした瞳に負けたわけじゃありませんからね!!
「やってみせましょう! ええ、やってみせますとも! 私はそんなに重くありませんから、懸垂くらい余裕です!!」
そして始まる懸垂大会。
「どうですかくーちゃん! あたしはこんなにもパワフル!」
10回も懸垂できたあたしを褒め称えるがよい! まさにあたしが神!!
「ありえないだろ……どんなイカサマしてるんだ?」
「どうやってですか!? 懸垂でイカサマって、チェスでイカサマするほど簡単じゃありませんからね!」
「あれだよ、魔法で体を風船みたいにしてるんだろ」
「そういうのはゆずちーの専売特許です! あたしにはそういう不思議パワーはありません!」
「待て待て、みっちゃん。落ち着いてゆずちーを見ろ……」
くーちゃんはなんとか3回懸垂できましたけど、ゆずちーは……ゆずちはー……。
「どうせ私は1回もできませんでしたよおおおおぉぉぉぉぉぉ!! うああぁぁぁぁぁん!!」
ゆずちーが泣きながら校舎へと走っていきました。久々のゆずちーダッシュ。
「懸垂に体重はあんまり関係ないと思うぞ私は」
「あたしもそんな感じはしました」
「で、どうするんだ? ゆずちーを追いかけた方がいいんじゃないのか? 今さっきので絶望したゆずちーは屋上まで駆け上がって、そのまま身投げをするかもしれないぞ!」
「大変ですくーちゃん! 追いかけないと!!」
まあ、屋上にたどり着く前にばてているゆずちーを発見できたわけですが!
「元気出せよゆずちー」
「ゆずちーが一番か弱い女の子だったということでオッケー」
「うう~……釈然としません……」
「これからは嫌がらせ的な意味も込めてみっちゃんをムキムキマッチョにしてやればいいさ」
「待ってください! さっきも言いましたけどあたしは――」
「問答無用! やるんだみっちゃん!!」
「えーっと、じゃあ……スクワット20回くらいで」
ゆずちーが困ったような顔をしつつも鬼のようなことを言ってきます!! やりますよぅ、やればいいんでしょう!! あたし、ファイトオオオオオオ!!
翌日、あたしは筋肉痛で苦しみながら登校しました。なんでも、体育があるんですって! おほほほほほ……。あたし、死んだ……。
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