みっちゃんワールド #22 バレンタインの話
「さて、そろそろチョコの日である。君たち準備はいいかね?」 一番興味なさそうなくーちゃんがバレンタインな発言を最初にするなんて! 天変地異の前触れだよっ! バレンタインデーの基盤が揺らぐ大事件。チョコレート消失事件の前触れだよっ! 「みっちゃん、君はまたおかしなことを考えてるんじゃないのか?」 ゆずちーが真っ赤になって、うつむいてしまいました。もう新しい相手をみつけたんですかっ! さすがゆずちー、失恋マスターですねっ! おっと、今のはオフレコで頼むよ君達。 「それでくーちゃん! ゆずちーの告白は成功すると思いますかっ!?」 校庭で告白して玉砕、ラブレター書いて玉砕、文化祭のイベントで告白して玉砕。これは酷い! 「酷いですくーちゃん!!」 ゆずちー大激怒。これはもしかしてゆずちーから友チョコも本命チョコも義理チョコももらえないフラグというやつでしょうか!? そんなっ!? あたしのチョコレート計画が!! 「ゆずちーに男ができるのなんて反対だ!」 な、なんですと……! そういえばそういう話をテレビで見たことあるよっ! ゆずちーもああなるのっ!? だめええええええええええ!! 「ゆずちぃぃぃぃぃーっ! あたし達のことを見捨てないでください!」 言葉に詰まる、ということはやっぱりぃぃぃぃ!! 「ゆずちー、友情は大切にしないとダメなんだよっ! 恋愛は不発弾! 恋愛はギャンブル! 外れたらとんでもなく痛いんですからねっ!」 てなことがあったのが数日前。そして今日、 「海々ちゃん、一緒にチョコレートを作りましょう」 とのことなので、お姉ちゃんと一緒にチョコ作りです! 材料は用意しておきました! 「まずは湯煎なる作業を行う必要があるそうです。チョコを鍋に入れて加熱すればいいのでしょうか?」 お姉ちゃんが黒いチョコを刻んでいる間にあたしは白いチョコを刻みました。今年のバレンタインチョコは白黒二段重ねがいいと思うんですっ! ゆずちーにはシロクロつけてもらわないといけません! 「海々ちゃん刻んだチョコレートはボウルに入れておけばいいですか?」 くーちゃんも今のお姉ちゃんみたいにあたしの指示に忠実ならいいのに! 「用意できましたよ海々ちゃん」 お湯がある程度温まってきたところで火を止め、 「今ですお姉ちゃん!」 姉妹揃ってチョコレートの入ったボウルを別々の鍋にいれて、ヘラでかき混ぜる。どんどんチョコレートが液状化していって面白いですね! ついでに刻んだナッツも入れておきます!このナッツが後々の食感に素晴らしい影響を与えるのです! 偉そうな人はそう言いました! テレビで! 「チョコレートを混ぜながら冷やします」 チョコの入ったボウル2つを氷水の入った別の鍋にいれて、まぜまぜ。 「今です! 再び湯煎!」 適当に湯煎して完了! 「海々ちゃん、温度調整が適当すぎたので恐らくテンパリングは失敗しています。後でまた作り直した方がいいでしょう」 と、お姉ちゃんは言ってましたが、完成したチョコは別にどこにも問題があるようには見えません! むしろ市販のチョコよりもいい出来栄えで美味しいです! もぐもぐ。 「……おかしいですね。写真と見比べても、失敗しているチョコレートのそれではありません。あの適当なうろ覚え的な作り方で成功した、ということでしょうか?」 腕を組んで首をかしげているお姉ちゃんがちょっと子供っぽくてかわいいですね! ゆずちーはともかくくーちゃんはお姉ちゃんを見習って、大人にも子供にもなれる女性になってほしいものです! ちなみに材料がまだまだ余っていたのでもう1回作ってみましたが、普通に成功したと思われます。 「海々ちゃんはこういったセンスが優れているのかもしれませんね。私ももう少し練習して、当日海々ちゃんに……」 言っておいてよかったです! バレンタインがいきなり悲劇にならなくてよかったです!! そしてバレンタインデー当日。 「いくぞ、みっちゃん! チョコレートの貯蔵は十分かっ!」 そしてゆずちーに突撃。 「トリックオアトリート!」 ゆずちーから綺麗に包装されたチョコレートを頂きました! やったね! 「これはあたしからです! ありがたく受け取りたまえ」 両肩をつかまれてガクガク揺らされました! ゆずちーとは思えないパワフルな行動であたしの至高は一旦停止ですよっ! 「しかしゆずちー。わりとマジな話、早く告白しないと別の女子にとられる可能性はあるんじゃないのか?」 戦場へと赴くゆずちーを見送っていたら、くーちゃんがあたしのチョコを袋から取り出してまじまじと見つめていました。 「手作り……だと!」 あたしもくーちゃんもハート型の量産型です! 「しっかし、さすがはゆずちーというか、なんて残念なんだゆずちーというべきか」 その後ゆずちーがどうなったのかはご想像にお任せします。 「くーちゃんは恋愛に興味ないの?」 それからチョコレートに塗れていたポンちゃんをさらにあたしのシロクロハートチョコで染め上げたりしました。そして学校も終わって家に帰ったら、ザッハトルテにココアにチョコレートアイスに手作りチョコにとチョコレート祭りが開催されていました。おおう……今年は量でせめてきましたかお姉ちゃん!! 絶対に学校サボって帰ってきましたねっ!? 「海々ちゃん! 私の気持ちを受け取ってください!」 恋愛とは違いますけど、あたしはちゃんと愛されてます! 大人になるまではこれでいいと思うんです! お姉ちゃんについては大人になってから考えましょう! 大人のあたしへ丸投げして今の幸せと量が多すぎる苦しみを謳歌しますっ! 準備はよさそうですねチョコレート君! あたしもバッチリだよ! 今年もまたお姉ちゃん(チョコ)との戦いの火蓋はきられたのです!! |
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