みっちゃんワールド #32 帰ってきたみかんの話
話をしましょう。あれは今から、3〜4年、いえ、1〜2年? とにかく何年か前のことです。まあいいです。あたしにとってはつい昨日の出来事みたいなものだけど、だれかにとっては明日の出来事かもしれません。 彼女には72通りくらいの呼び名があるらしいです。なんて呼ぶべきでしょうか? 確か最初に会ったときは、ポン……そう、彼女は最初からあたしの言うことなんて聞きませんでした。あたしの言う通りにしておけばよかったのに。まあ、悪い人ではないんだけどね! 「そんなみかんで大丈夫ですかっ!」 そしてあたしは目覚めました。 「予鈴がなった途端に起きるとか、みっちゃんもついに中学校の軍門に下ったか」 何を言っているのかな、くーちゃんは。このあたしが何かの軍門に下るなんてありえません! 日本国民としての義務を全うしているだけのことです! 「実はポンちゃんをネタにした面白い夢を見ていたような気がします」 明日の給食には冷凍みかんがついてきますから! ふっふっふ……明日の戦争が楽しみですね。 「いや、まて。また職員室行きは勘弁だ。行くのならみっちゃんだけにしてくれ。みっちゃんが突然みかんを投げて窓ガラスを粉砕するという流れで頼む」 それは職員室行きだけじゃすまない気がするんですよね! 絶対に親が呼び出されて一緒に校長室でお説教という流れですよねっ!? あたしはあの部屋にだけは入りたくありません! 「待ってください。ここはあたしとくーちゃんの間をとってゆずちーが校長室に行くということで手を打ちませんか?」 後ろにゆずちーが!? 「謀りましたね、くーちゃん!! いろんな意味で!!」 後ろから缶詰なんて話が出てきました。開けずに缶ごと投げつけたら大ダメージです! 仮にも金属ですから骨折くらいはするかもしれません。凍らせる必要すらない驚異的なウェポンです!! 「投げるなみっちゃん。頭に当たったら死ぬかもしれないぞ!」 首を回しながらゆずちーに今思った疑問を投げかけました。 「缶詰のみかんはどうしてあんなに綺麗なの? みかんにいっぱいくっついてる白いのはどこにいったの?」 うんうんとくーちゃんは首を縦に振って自己完結しています。していますけど、機械処理を魔法処理に置き換えても大丈夫な感じなのはまずくないでしょうか!? どちらでも理解不能という意味で! ブラックボックス化している「機械」部分の説明を要求します! 「熱湯につけると皮はむきやすくなるんです。一度熱湯につけてから、皮をむくと缶詰のみかんのように綺麗に中身だけを取り出すことができるんです」 おおっ!! それが「機械」のしている仕事! あ、そういえば、 「あたし知ってます! トマトをお湯につけると簡単に皮がむけるんです! それと同じですね!」 ふっふっふ。どうやらくーちゃんは知らなかったようですね。あたしが知っててくーちゃんが知らない知識があるってとっても素晴らしいと思います! さあ、くーちゃん、もっとあたしを褒めて、称えて、崇めるといいです! 「ちっ……これからは、敬意を込めてトマトマスターみっちゃんと呼んでやろう」 おでん!? あの冬にピッタリの食べ物で、どこのコンビニでも売っているあのおでん!? そんなものを知っているゆずちーこそトマトマスターの称号が相応しいと思いました。 「でもトマトですよね!? 茹でたりしたら皮がむけてつるつるに!?」 想像してみてください。茹で上がっているトマトを。トマトベースのスープみたいになっていないか心配です! 「意外と形保ってますよ。下手に動かさなければ大丈夫みたいです」 みかん、鍋! くっ、みかんを皮ごとぐつぐつ煮込んでいるイメージしかありません! ですが! 「食べてみたいですそれ!」 アニメですね、分かります。 「みかんを主人公にしたアニメ」 そう。あたしの目を覚ましたのはその鐘の音です。ゆずちーはささっと自分の席に戻ってしまいましたが、くーちゃんは先生がくるまで粘っているつもりのようです。 「ついに始まりますよ、みかん史の授業が」 みかんの話をしていたら、みかんを使った甘い物が食べたくなってきました。そうですね、手の込んだものをいきなり作ろうとすると失敗してしまうかもしれません。インターネット様のお力を借りてレシピを調べてからにしましょう。 |
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