みっちゃんワールド #24 Dance with April Fools' Day phase2: 実行の話
「くーちゃん、ちょっとトイレを借りますね」 「おう」 「いってらっしゃい」 ゆずちーが1階に下りてみっちゃんと2人っきりになったのを確認して、私は素早く行動を開始する。 「おっと、ちょっと電話がかかってきたみたいだ。相手は、海深さんか」 みっちゃんを残して私は部屋の外に出る。 「もしもし海深さんですか。ええ、大丈夫です。予定通りにみっちゃんは足止めしておきます」 わざと大きな声を出して海深さんと会話してる「ふり」をした。 「勿論、予定時刻にみっちゃんを引き渡しますって。報酬はスイス銀行に振り込んでおく方向で」 わずか10秒ほどの電話をして部屋に戻ったら、 「くーちゃん、何かヤバイ取引の電話してたよねっ!?」 とみっちゃんが詰め寄ってきた。 「何を言っているんだ。ちょっとエルフについてあれこれ語っただけだぞ」 みっちゃんがなんだかヤバイ!! 早すぎるがネタをばらすか……。 「今の電話はエイプリルフールの嘘だ」 いくらなんでも適当すぎるだろみっちゃん。内心を隠し、棒読みでそう言いつつ、私は窓から外を眺め……絶句した。 「あ、ありえないだろ……」 銀色の円盤が何かをアブダクションしていた。……いや、待て待て!? どういうことだ!? 宇宙人はみっちゃんによる適当な嘘だろ? あれっ!? 本当にUFOあるぞ!? どうなってるんだ!?!? 「みっちゃん、外にUFOで、飛んでるぞ……」 みっちゃんは気付いてない。まあいい、あれは本気でなんだか分からないけどまあいい。脳ミソが拒否ってるんだ、察してくれ。 「くーちゃん、みっちゃん!!」 ばたんどたんと音がして1階から私達を呼ぶゆずちーの声。急行したところゆずちーがとんでもない格好でトイレから飛び出してきていた。 「UFOが空にいます!?」 その場で屈み込むゆずちー。でも状況は変わらないぞゆずちー!! 「くーちゃん。今まで秘密にしていたけどゆずちーは実はノーパン派なんだよ!」 私とみっちゃんがやりあっている間にゆずちーが超速でトイレにリターンした。……追い討ちかけたようなものだしな。そりゃ天岩戸に閉じこもりたくもなるか。 「ゆずちーが可愛そうだから部屋に戻ろうか。そして何事もなかったかのように迎えるんだ」 そして状況は一変する。 「くーちゃんをお借りします!!」 トイレから戻ってきたゆずちーに引っ張られて玄関前に連れていかれ、 「みっちゃんにノーパンだって言われた途端、本当にパンツが消滅しました」 ……そんなことを急に言われて私はどうしたらいいんだよ。ていうかマジで何が起こってるんだ!? 「いや、正直、変だとは思ったんだよ」 認めたくはないがそうだとしか言えないからなぁ……。 「目覚めたのか、誰かに与えられたのかは分かりませんけど放置できない危険な力です」 私の超能力にも対処してくれたしな。ゆずちーママには期待したい。というかあの人が投げたらもう本当にどうすればいいんだ? みっちゃんという存在を、消す……? ない、よな。 その後のことはダイジェストでまとめよう。 電話して戻ってきたゆずちーにクモ襲来。背中に入って大パニックの末に服を全部脱ぎすてた。その後しばらくは私のベッドで布団を被ってすすり泣く声だけが響いた。 「ほー、呪術師のみっちゃんはとんでもなく酷いやつだな。ゆずちー超泣いてるぞ」 ゆずちーの犠牲はあったもののみっちゃんのクラスから「呪術師」を消去。 「明日の天気は雨じゃなくて、食べられる飴だねっ!」 次々とくだらないことを言い出すみっちゃんをバッサバッサと斬り捨てる。いや、マジで滅多切りにしないといけなくなるとは思わなかったよ!! でも世界のため、私の未来のためだ!! 「まったくみっちゃんの嘘はレベルが低いな。いや、最早嘘ですらない。これが10年後も子どもであるみっちゃんの限界か……」 ハイパーレディになるのか……。まあいいや。一生子どもではなくなったわけだしな。はぁ……疲れた。 「なんでもあのゆずちーママがみっちゃんに急用らしい。車で5分もかからないってさ」 言わせてなるものかっ! 犠牲者はゆずちーだけで十分だ! と、みっちゃんの口に手を突っ込んだ。 「酷いよくーちゃん!」 ゆずちーママは事故るらしいぞ……。どうするんだゆずちー……。ゆずちーはすでに涙目だ。あんな人でも母親だもんなぁ……。結論から言えば確かにゆずちーママは事故ったさ。そりゃ盛大にな! ぶっちゃけ目の前で起こったことが信じられなかった、というか……まともに認識できなかったというべきか。私にとってそれはあまりにも現実離れしてるように見えたんだ。みっちゃんが車にぶつかって派手に何十メートルも吹っ飛ぶ光景なんて……。 「み、みっちゃああああああああああああん!!」 だから、ゆずちーとは違ってそう叫んでみっちゃんに駆け寄ることも叶わなかった。 「条件は全てクリアだ。譲葉さっさとみっちゃんを回収しろ、ああそれと……」 この人がみっちゃんを撥ねたんだ。この人が……こいつが!! と睨みつけたら、目の前にプラカード。 『エイプリルフールどっきり大成功!!』 …………は? どっきりだと……? えっ? 「な、な……なんだとおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」 若干距離があるものの血だらけというふうには確かに見えない。 「我々はこれからどっきり反省会だ。2人を借りるぞ」 ハイスピード展開すぎてついていけなかったぜ。ははっ……。いや、ほら、もっと何かフォローしてくれよっ!! 最後の最後で放置はどうしたらいいのか分からなくなるからやめてくれっ!! ◇ 翌日、我が家にて。 「昨日のくーちゃんはいろんな意味で面白かったね!」 もうあんな嘘が本当になるとかこりごりだな。来年は勘弁して欲しい。 |
【TOP】