みっちゃんワールド #19 みかんの話


 ポンちゃんの顔を見ていたら、どういうわけかみかんが食べたくなりました。

「冬と言えば炬燵にみかん。これが鉄板だろう」
「あの……今は冬では」
「そうかもしれません。でもそんなことよりもあたしが気になったのは、こたつって漢字で書くと異常に難しいってことだよっ!」
「みっちゃん……よく見てください。分解してみてみるとそんなに難しい漢字では……」

 ゆずちーがわざわざ「炬燵」という字を書いてあたしに見せてくる!! 普通は読めてもとっさに書けないと思うんですけどねっ! ゆずちー恐るべしだよっ!

「あたしは、あるものをそのまま大きくこの目に焼き付ける!!」
「どうせ蜜柑って漢字も書けないんだから大丈夫だよみっちゃん」
「ひらがなって素敵な文字だとあたしは思うんだよねっ!」

 ちょこっとの漢字とたくさんのひらがな、そしてカタカナ。それくらいの方があたし的に世界は行きやすいと思います。
 そもそもですね! わざわざ難しい漢字を使って伝えたい意味が伝わらなかったり、漢字で書いてふりがなを振るなんて本末転倒だと思うんです! すべての日本人に分かる言葉を使うべきだとあたしは常々思っています!

「みかんのジャムと言えば、マーマレードだが、なんだよマーマレードって! オレンジジャムでいいだろ! マーマレードとか聞いてみかんを思い浮かべるやつは変態だ!」
「あの……くーちゃん。マーマレードとは別にみかんのだけのジャムという意味ではありません。ゆずとか入ってます」
「さすがゆずちー! ゆずなだけに!」
「つまり……あれか。みかんじゃなくて……柑橘類のジャムということか!」
「えっ、あ、そういうことです」
「なるほど。私が見たことないだけでオレンジジャムは実在ってことでオッケー?」
「オッケー」
「パンが食べたくなりましたね。くーちゃんのせいですっ!」
「それは単純に3時間目が終わってお腹がすいてきただけだろ? 私のせいじゃないと思うぞ」
「みっちゃん、今日はデザートに冷凍みかんがついてきます」
「そのみかんの産地はどこですかっ!」

 愛媛みかんって有名だと思うんですけど、愛媛以外のみかんもあるんですよねっ!?

「さすがに産地の記載は……」
「はっ……これはもしや産地偽装の罠では!?」
「いくらなんでも考えすぎだろ。みかんなんて冬にはダンボールで大量に余ってて処分に困るような果物だぞ? 偽装する必要性をまったく感じないぞ! 愛媛みかん万歳!」

 くーちゃんがしてるのは万歳じゃなくてガッツポーズだと思います!

「みなさんみかん=愛媛県って思っていますよね?」
「超有名だよね、愛媛みかん! 愛媛みかんのダンボールもいっぱい見かけるよね」
「いや……ダンボールは見かけないだろさすがに」
「2人とも聞いてください」
「珍しくゆずちーが仕切ろうとしてる。よーし、珍しいし私は耳を貸そう」
「くーちゃんの耳、1週間レンタルでみかん1個だよっ!」
「みっちゃん、後で冷凍みかん全力で投げつけてやるからゆずちーの話を聞こうじゃないか」

 給食の時、みかん大戦争が勃発するわけですがその話はまたいずれ。教室中で飛び交うみかんはついにクラスを超えてぶつかり合う! 乱入してくる教師をみかんで狙撃し、みかんで爆撃し、みかんで吹き飛ばす! あたし達のみかんはどこへ向かうのかっ! 劇場版みかん大戦争、カミングスーン。

「実は日本におけるみかんの生産量第一位は愛媛県ではありません」
「えっえー!? どういうことなのゆずちー! 愛媛愛媛詐欺だよねっ!」
「まあ、有名だからトップってことはないよな……うん」

 あたしにとっては驚愕の新事実だよ! 今度からあたしはどこのみかんを応援すればいいの!?

「みかんを応援してたとか初耳だぞ」
「みかんを使ったスイーツは意外と多いんです。あたしのみかんパワーッ!」
「分かった分かった。みっちゃんはみかん大好き、それでいいんだな」
「そう言われるとそうでもないかもしれません。イチゴもキウイもいいよねっ!」
「浮気しすぎだろ、このたまごマスター!」
「かりんとうの分際であたしにたてつくとは!」
「誰がかりんとうだ! あたしはあんなまずいお菓子じゃなくてクールな方だ!」
「えっ? 怒るところはそこなんですかっ!?」

 あたし達のやり取りをただ見ているだけなことが多いゆずちーがツッコんできたよっ!

「もうみっちゃんはあれだ、頭の中が混線しすぎてる。まとめてから会話しような。それで、ゆずちー、第一位はどこの県なんだ? まさかの北海道か?」

 北海道みかん? 聞いたこともありません。でもサッポロみかんとかなんだかカッコイイ! 札幌雪祭り、冷凍みかんもあるよっ! みたいな!

「いいえ、和歌山県です」
「和歌山県か。言われてみれば和歌山県のみかんって聞いたことあるな」
「それはともかくだよっ! ぶっちゃけ和歌山県が日本のどこにあるのか分かりません!」
「君は本当に日本人なのか!? 地図帳をみろおおおおおお! 大阪とかの下の方にあるから」

 たまたま持っていた地図帳を広げてみると確かに存在しました和歌山県!

「ちなみに同じく柑橘類のはっさくも日本の生産量第一位です」
「……ごめんなさいゆずちー。はっさく分かりません! そういえばゆずちー、唐突に思ったんだけど、鏡餅の上にはなんでみかんが乗ってるの? 手ごろな果実だから?」
「えっとですね……鏡餅というのは元々神様にお供えするものなんです」
「つまり神様はみかんが大好きってことでファイナルアンサー?」
「違います」
「そっか……」
「詳細は省きますけど、あれは三種の神器を模ったもので、みかん――正確には橙なんですけどそれは勾玉のかわりです」
「ほー……詳しく聞くと難しくなりそうなので10年くらいたってあたしが天才になってからでお願いします」
「10年たってもみっちゃんはみっちゃんだと私は思う」
「くーちゃんもあまり変わっていないと私は思いますけど……ああ、いえ、悪い意味ではなくて人間としてです」
「ゆずちーはきっとおっぱいが夏みかんみたいなスーパーサイズになってる気がします!」
「みっちゃんは桜島みかんでいいよな」
「くーちゃん……それって世界一小さいみかんだったような気がするんですけど!」
「ちっ、ばれたかっ!」
「くーちゃんの胸には冷凍みかんをプレゼントしてあげましょう!」

 第一次冷凍みかん戦争はっじまるよー!
 そしてあたしとくーちゃんは2人揃って職員室行きになりました。食べ物を使って遊んだり、喧嘩したりするのは止めましょう。海々お姉さんとの約束だよっ!


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