みっちゃんワールド #14 Goddess Rebellion phase1: 隕石の話


 いつだってこんなことじゃないことばっかりだよ!

 それでも今まではなんとかなったんだし、これからだって何とかなるとと思ってたよ。思ってたんだけど世界は結局のところ理不尽で、どうしようもなくって、救いようがなかったね。

「あー、こんなことになるのなら貯金全部使っておけばよかったなぁ」

 くーちゃんがつまらなそうに呟きました。

「私も……録画してるアニメ全部観ておけばよかったです……」

 ゆずちーは悲しそうに。

 学校の屋上を占拠してるのはあたし、くーちゃん、ゆずちーの3人だけ。今頃地上は絶賛大混乱であろうことはラジオやケータイがあればよく分かるね。
 枷が外れて暴走してる人達が暴れまわってるんだと思います。……危険すぎてもう学校から外に出るなんて不可能すぎです。
 あたし達はただの女子中学生。男子に集団で襲われたりしたら、それこそもう終わりです。R18ルートに突入してしまったらサイテーすぎますね。

「アメリカでもダメだったみたいですね。うん、もうおしまい」
「…………二人とも何気に余裕ありますね」
「余裕? いや、私は何をする気力もなくなっただけだよゆずちー」
「あたしもそうかな。今更何をしたいっていうのもないしね」

 明日で世界が終わる。終わったも同然になる。
 何人死ぬのかなんて分からないけど、日本は思いっきりインパクトの範囲内だし、きっとあたし達はみんな死ぬんだと思うんです。

 突如として観測された超巨大隕石。今それが地球に向かってきています。アメリカとかがミサイルで攻撃したなんてニュースも聞いたけど効果はなかったみたい。

 だから、……おしまい。全部、終わり。

「よーし、せっかくだしゆずちーを脱がせて暖をとる!」
「えっ!? ど、ど、どうしてそういう判断になったんですか!?」
「暇だしゆずちーを辱めよう」
「やめてっ、やめてよぅ……」

 何もしてないのにゆずちーが泣き出したので、結局何もしませんでした。

「地上だとマジでそいうことになってるんじゃないのか? だって明日でみんな死ぬんだぞ。絶対にやりたい放題の無法地帯になってると思う」
「だよね……お店なんてめちゃくちゃに荒らされてるだろうし」
「……明日を待たずに命を失った人も多いと思います。かわいそうに」

 こういうどうしようもない緊急事態になった時、人間は本性を表すんだと思います。

「お姉ちゃん……生きてるのかな。せめて明日までは無事だといいんですけどね」
「……お母さん無事でしょうか」
「兄貴は……無事なのか? マジあいつ大丈夫か? 一応男とは言え心配すぎる……」
「だよねーくーちゃんのお兄さんってアレだしね」

 屋上から地上を見てみると、ちょっと遠くの建物が燃えていました。消防車はきっとこないでしょう。

「学校が燃えたらヤバイな。屋上は占拠したけど、下にもまだ人どうせいるんんだろ?」
「恐らくは……」
「分かったよくーちゃん! みなごろしだねっ!!」
「待て、待て! 君は一体今から何をしようとしてるんだ!」
「あたし達の安全性を確保するために邪魔者を抹殺するんだよ!」
「みっちゃんがこの状況下のせいで壊れたか……だが、やめておけみっちゃん。それは、本当に最後の手段だ。知り合いかもしれないんだ、軽々しく殺すなんて言うなよ」
「……あ、反対側の校舎にいる男子数人と目があってしまいました」

 屋上をふらふらしていたゆずちーが恐ろしいことを口にしたのです。普段なら目があってもたいしたことじゃないよ。でも今、この状況で女子が男子に見つかるのはヤバイと思うんですっ! 男はみんなオオカミ!!

「みっちゃん、やるぞ皆殺しだ。武器は何があるんだ?」

 くーちゃんも壊れてきたようです。

「傘と椅子とはさみ、カッターナイフ、シャベル、くらい?」
「銃はないのかっ! スナイパーライフルはどこだっ!!」
「あ、ありませんよくーちゃん」
「見つかった責任をゆずちーにとって貰うがのいいと思います!!」
「賛成!」
「そ、そんなぁ……」

 そうやってすぐに泣くんだね、ゆずちー。仕方ないなぁもう。

「ここはあたしに任せて先にすすめーっ!」
「道なんてあるかっ! みっちゃんだけにそんな苦しい役目は押し付けないさ。死ぬときは一緒だ! だろ、ゆずちーっ!!」
「……はいっ!」

 まあ、結局その後何かあったわけじゃないんだけどね。運がよかったのかな。不幸中に幸いがあったのかな。

「政府のクソ野郎はシェルターに隠れたり、影響の少ない外国に飛んだんだろ。最低だな」
「でもさ、くーちゃん。生き延びようとすることは罪なのかな?」
「そりゃ、人間として死にたくないって気持ちもは私だってあるし……罪とは言えないけど」
「みっちゃん、責任を放棄して逃げたのは事実ですから……」
「でも……あたし達は、真っ当な対価なしに国家の中にいたんだよ。生まれてずっとフリーダムだったわけじゃないんだよ」
「みっちゃんらしくもないことを……ああもう、世界の終わりだな」
「酷いよもう! あたしだってシリアスできるんだからねっ!」
「ぷっ……。もう、こんなときにみっちゃんは。フフフフ……」
「ゆずちーがツボったようだ」
「こんな時こそ笑いが必要なんだよ。あたしはゆずちーに大切なものを提供したのです」
「ラジオの音、未だになってるんですね」
「政府の連中とは違うってことさ。いや、どうしようもないからこそいつも通りに終わりたいのかもな」
「いつもどおりなの? このラジオ放送結構はっちゃけてないかな? 日本の悪口とか偉い人への文句とかバンバン飛び出してるけど」
「最後の放送ってのはみんなはっちゃけるものだ。今なら言いたいこと言いたい放題だしな」
「掲示板のスレ消費量も凄いですね」

 ゆずちーはケータイでインターネットを見てるみたいだけど、

「ゆずちーのケータイなんでネットに繋がるの? あたしのアンテナ1本も立ってないし、ネットにも繋がらないよ?」
「あっ、えっと、その……魔法でしょうか?」
「魔法なら仕方ないな。私も魔法のケータイほしかったよ」

 夜中を回ったころ、あたし達は3人で川の字になって寝転んでいました。

「正直意外だった。私達の中でも誰か泣き叫んだり溢れ出る絶望を振りまくようなやつが出てくると思ったのに」
「くーちゃんは結構冷静だよね」
「内心はそうでもないけどなー。最後を無事に迎えられるのならそれでいいよ」
「私も、そんな感じです。一人だったらきっと、ずっとずっと泣いていたと思いますけど……2人が一緒でしたから」
「あたし達、ずっと友達だよね?」
「当たり前です。今までだって、これからだって。ずっとずっと……」
「当然だろみっちゃん。生まれ変わっても絶対に親友になってやるから覚悟しておけよ!」

 3人で手を繋いであたし達はその時を待った。そして、あたし達は超巨大な何かが落ちてくるのを目撃した。あたし達の終焉は思った以上に神秘的だったね。空が真っ赤で、今までにみたこともないような不思議な光景だったんだよ。

 で……死んだ。それを誰にも伝えられず、どこにも記録できずに。

  当然のようにあたし達以外にもいっぱい死んじゃったらしいよ。それに土砂がどばーんと舞い上がって日光をさえぎったせいで凄く地球が寒くなったみたいだね。

 ――無論このような終わりは認められぬ。妾はまだまだ飽きたわけではないゆえにな。リセットを

「という夢を見たんだよっ!」
「奇遇だな。私も似たような夢見たんだよ。不思議だな」
「ふっふっふ、これはあたしとくーちゃんの心が赤い糸で繋がってる証拠だね!」
「赤いのはダメだろ。そこは白い糸でいいんじゃないのか? いや、寧ろ糸なんていらないだろう」

 と、くーちゃんはあたしの手を取る。

「こんなに近い距離なんだからわざわざ何かで結ぶ必要なんてないだろみっちゃん」
「そうだねくーちゃん! ところでゆずちーはさっきから何を言ってるの?」
「あ……、ありえません。誰が、どうやって、この現象を……この終焉をなかったことにしたんですか? 時間操作にしても大規模すぎますし……」

 時間がどうとかさっきからぶつぶつと言っていてちょっと怖いです。お気に入りの目覚まし時計を思いっきり叩いて壊しちゃったとかでしょうか!?

「あれだろ。クロノライフ」
「クロノライフ!?」
「ゆずちーがはまってるネットゲームだよ。過去と現代と未来を行き来して冒険するMMORPGらしい」
「なんだかよくわからないけど面白そうだね! パソコンがあれば遊べるんだよねっ!? どうやってやるの?」
「私は知らん。ゆずちーに聞け」
「ゆずちー!! 教えてクロノライフ!!」

 あたしのMMORPGライフが開幕するっ、かもしれませんよっ!


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