今日は珍しく別クラスのお友達がやってきて、あたし達の輪に加わっています。 「そういえばこうしてポンと話すのも5年ぶりか……」
「こらこらちょっと待とうや。あんまりいい加減なこと言うとお姉さん君の事殴るけどいい?」
「すまん。5ヶ月を言い間違えた」
「どんないい間違え……?」
「ポンちゃんってなんだかみかんみたいな顔してるね」
「みっちゃんとやら。君はお姉さんに喧嘩売ってるよね? いいんだよ、やろうか血みどろの殴り合い」
「あ、あたしを殴ったら一生みかん顔って呼んでるぅっ!! その覚悟があるのなら殴ってみなさい!」
……殴られました。
「もう一発殴られる覚悟があるのならどうぞみかんとお呼び。ほらほら」
「ポン様お許しを……」
「ポンちゃん、暴力は駄目だと思います」
「しかしゆずちー、先人は言いました。生意気な奴は殴って黙らせろ。黙らなかったらもっと殴れって」
「どこの先人? 少なくともうちの卒業生じゃないとあたしは思うんだよね」
「ところでお姉さんのあだ名のポンの由来って知ってるかな?」
「ゆずちーがゴッドマザーだってことくらいは知ってるけど、由来は聞いたことなかったな」
「何? ゴッドマザーって? ポンちゃんはゆずちーの娘だったってこと!?」
「そりゃいいね。あたし今度からゆずちーのことゆずママって呼ぼう」
「えっ!? それはちょっと困るといいますか、もうずっとゆずちーのままでいいといいますか……」
「そんなことよりもポンちゃんの名前の由来だよ! ポンポンペイン以外の由来が思いつきません!」
「何が腹痛だよ。みっちゃんパソコン使ったことないくせにたまにソレっぽい用語知ってるのはなぜだ?」
「ゆずちーがたまに教えてくれるから!」
「さすがは歩くインターネットのゆずちーだ」
「えっ? 歩く、インターネット?」
さすがに困惑しているようですね、ゆずちー。それも当然でしょう。この呼び名はあたしとくーちゃんが雪花堂で30分も議論して固まったゆずちーの新しい称号なんですからねっ!
「昔の知識人は歩く図書館って呼ばれてたらしいから、今の知識人であるゆずちーはインターネットって呼ぶのがふさわしいだろうと私とみっちゃんは思うわけだ。異論は認めない」
「ええええぇぇぇ……」
「君たちや、君たちや。結局ポンの由来に辿りつけてない。むしろ一駅離れたよ今。このままだと辺境に行ってしまうとお姉さんは思うわけで、そろそろズバッと行こうね」
「ポンちゃんの由来はピンポンからです!」
ゆずちーは自らが話題の中心になることを回避するためにポンちゃんを生贄に!? ……なるほど、ピンポンですか。
「ポンちゃんがまさかピンポンダッシュの常習犯だったなんてええええ、いだたたたたたたた」
「そっちのピンポンじゃないってば。早く撤回しないと腕の骨が大変なことになるとお姉さんは……」
「冗談です、嘘です、出来心だったんです、あたしがやりましたあああっ!!!!」
腕をへし折ろうとしていたポンちゃんから解放されたあたしが、くーちゃんを盾にしてポンちゃんを威嚇するのは当然のこと! ふぅふぅ……腕はまだ無事です。よかったよかった。この腕がないとご飯もスイーツも食べられないし、ゲームもできない、マンガも読めないと悲惨なことになるところでした。
「なんだ。卓球の方のピンポンか。ピンポン玉か。電子レンジにいれると燃えて消滅するあれか」
「くーちゃんはまたそういう危ないことを……駄目だって言ってるでしょう?」
「そんな玉の話はもういいんです。そんなことよりもあたしの話をですねっ!?」
「みっちゃんのあだ名の由来だろう。それは……」
「あたしが言う、あたしが言います! あたしのみっちゃんって言うあだ名はあれだよあれ。なんだっけ、そうあれ」
「忘れる理由がまったくだろう? 引っ張ってるんだよなっ!? じゃなきゃマジで頭がいかれてボケたか!?」
「あたしの本名からです!!」
「せめて何かネタを提供してくれよっ!」
「くーちゃん……みっちゃんにそれはちょっと酷だと思います。あ、でも、違うの別にみっちゃんをバカにしてるとかそういうのじゃなくて……」
ゆずちーは優しいね。うん……。
「みーちゃんにするかみっちゃんにするかで迷って、なんだかんだでみっちゃんになったんだよな」
「あの時は私がみーちゃん派でくーちゃんが確かみっちゃん派だったような記憶があります」
「たしかくーちゃんと被るからみっちゃんにしようって、決まったんだと思う。きっとそうだとあたしの魂が強く主張している!」
「どれどれ? どこにみっちゃんの魂があるのかお姉さんに教えてみ?」
「見えないよっ、物理的には存在しないよっ! だから後ろに回りこんでセクハラしないでください!」
「ゆずちーの胸はわしが育てた」
「なんだってー!? その話、詳しく聞かせてもらおうか!!」
ポンちゃんがあたしの胸を狙って手を伸ばしていたんだけど、その途中で驚愕の真実が明らかになってしまったよ! そっかそっか、ゆずちーを育てたのはポンちゃんのセクハラテクニックだったのか!!
AからBへ移行するためにポンちゃんに全てを委ねるべきなんでしょうか!?
「ちょ、ちょっとぉ……信じないでくださいね、みなさんポンちゃんの言うことは嘘ですからね……!」
「次は私の由来だな」
「ホントになんでくーちゃん?」
「くーとか私の名字でも名前でもないしなぁ」
「元々はくーちゃんじゃなくて、クーの人だったんだよね」
「クーの人?」
「そうそうクーの人。遊ぶたびにクールなんとかっていうラムネみたいなお菓子をあたし達にくれたからそんな風になったの」
「ああ、クーってお菓子の……なるほどねえ。くーちゃん把握。最後のゆずちーも名前から来てるわけだしねえ」
名前から? はっ……! ゆずちーの表情から笑顔が消えた……!
「そ、そうなんです。私もみっちゃんと同じで本名が由来で……」
凄いあせってますねーゆずちーは。まあ、それもそうだ。ゆずちーというあだ名の由来は決して本名からきてるわけじゃないからねっ!
あれは今から7年前にあったこと。あの頃はあたし達もまだまだ子どもで純粋で、羞恥心なんて持ってなかったからね。だからこそゆずちーはあんなことを……。
「はい、ダウト。ゆずちー、残念だけど黒歴史公開の時間だ!」
「やめてええええええ、昔のことでしょう! 忘れさせてえええええええ!!」
「悠久世界の理に従い悪を捌く! 魔法少女プリチーゆずちー参上!」
当時の動きをできる限りトレースして、かの魔法少女の参上シーンを演出してみました。100点満点中50点は軽いと思うねっ!
「うわあああぁぁぁぁぁぁん」
ゆずちーは教室を飛び出してどこかへ行ってしまいました。
「みっちゃん……あたしはそこまでやろうとは思わなかったんだけど」
「ゆずちーの由来って今の? よくゆずちーって今でも呼んでるね。お姉さん感心しちゃう」
「名残だよ名残。昔は全然恥ずかしがってなかったら、そのままゆずちーで定着して今まで続いてる」
それ以来ゆずちーは魔法少女という言葉に過剰反応するようになりました。
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